Elixir de Jouvence / エリクシール・ドゥ・ジュヴォンス NV(2019)

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醸造方法

亜硫酸塩無添加

ワイン情報

「若さの霊薬」と名付けられたエリクシール・ドゥ・ジュヴォンス。
前年の2018年は、黒ブドウのピノ・ドニスを加えロゼワインでしたが、2019年は再びシュナン・ブラン100%の白ワインに戻りました。
このワインで印象的なのは、ビシッと1本筋の通ったミネラル感で美しい酸と一緒にエネルギーあふれる果実味をしっかりと引き締めてくれています。
香ばしさと旨味感はありますが、ふわふわしたところはなくフォーカスの定まった味わいです。

ベーコンなどの脂身であえたほっくり甘みのあるブロッコリーや、ケールとからすみのパスタなどと相性が良さそうです。

生産者情報(インポータ・造り手・問屋情報)

「日本人はあまり話さないよね。」
いつもの食卓に座り、いつものように黒大根を生のままスライスし始めるグザヴィエ・マルシェ。
そしてこの食卓では、いつものように彼との長い長い会話が始まる。
「僕たちは意見が違っても、とにかく一緒に話すことを大切にしているんだ。」
グザヴィエ マルシェのもとには、いつも沢山の人が集っている。
彼の家の庭にはキャンピングトレーラーが沢山停まっていて、そこに沢山の若者が寝泊まりしている。
それは、フランスだけではなく世界中からWWOOF(ウーフ)World Wide Opportunities on Organic Farms プログラムなどで人を受けれいているから。
敷地内には、 自家菜園があったり、鶏が飼われていたり、コンポストトイレがあったりする。
そして、そこで暮らすみんなが集う半屋外の広場がある。それは大きなガレージのような建物で、入り口は外に向けて大きく開かれている。
そこにテーブルやソファーや椅子を沢山置いていて、1日の仕事を終えたみんなで食事をしたり、ワインを飲んだり、音楽を聴いたり、語り合ったりすると言う。
ここに集う仲間たちは、自然を愛し、自然と共生を目指すコミュニティを愛する同志たちで、 互いに助け合って暮らしている小さなエコヴィレッジとなっている。

グザヴィエ・マルシェがこの場所に移住してきた当初、まだ建物は荒れていて、それを少しずつ修復しながらヴィニュロン(ブドウ栽培者・ワイン生産者)として生きるということに取り組んでいた。
ただ、そんな時からも、彼はワインのことだけを見ていたわけではなく、常に自然や、環境や、地域や、仲間のことを考えて仕事に取り組んでいたと思う。
志を同じくする人が集うコミュニティをもつようになって、グザヴィエはとても穏やかになったように感じる。
今となって思えば、ああ、こういうことがしたかったんだなと納得がいく。
彼らのナチュラルな暮らしぶりは徹底している。
初めてグザヴィエ・マルシェのもとを訪れた日本人の多くが面食らうのが、コンポストトイレだ。
バケツのような容器に用を足した後に木くずを被せ、人間の排泄物を微生物の力で分解し、それを庭や菜園のコンポスト(堆肥)として利用する。
自家菜園で作る野菜は、自分たちが食べるために様々な品種を栽培している。
そしてそこで蒔かれる種たちは、当然のように固定品種でありオーガニックだ。

グザヴィエとは、彼が手がけた初めてのヴィンテージの頃から付き合いがあるが、まさにその初めての輸入の時に、一生忘れることはできない彼らしい事件が起こった。
それは届いたワインがすべてラベル不良であったこと。そしてその理由は、彼とたくさん話をしていた僕にはとても納得できることだったこと。
グザヴィエ・マルシェは、自然であること、環境に優しいこと、そして地域のつながりを大切にしている。
だから彼のワインは全て、一枚一枚すべて手作業でラベルが貼られていて、その時に使う糊ですらも地元産の麦から作られた天然糊を使用している。
初めてのヴィンテージ、たくさんのワインの出荷があって、その一枚一枚を天然糊で貼っていった結果、その糊がきれいに乾ききる前に箱詰めされたことで、シワになったり、箱とくっついたりしていた。
「ごめんね、2回目からはもっと気をつけるよ。」
そう言ったグザヴィエ・マルシェ。
回を重ねるごとにラベル不良は減っていったものの、人の手でやる作業であることには変わりなく、今でも少し、シワや汚れのついたラベルのワインは見つかったりする。
でも僕は、それで良いと思っている。
「日本人はラベルのこと本当に気にするよね。」
「そうだね。まだ日本ではワインはハレの日の特別な飲み物だからね。誰かへの贈り物にすることも多いしね。」
でも、だからといって地元の麦を使った天然糊を使うのを止めて、もっと綺麗に貼れる合成糊に変えてくれなんてことは言わないし、言うつもりもない。
だって、目の前の一本一本から見て取れるラベルの表情の違いが、彼の自然への想いと地域への愛情を教えてくれるのだから。こんな特別なことは、なかなかないと思う。

グザヴィエ・マルシェは、パリでコンピューターエンジニアとして働いた後、ロワール渓谷の下流に位置するアンジュ地区に移り住みヴィニュロン(ブドウ栽培者・ワイン生産者)となった。
都会のエンジニアから、自然と共生する農業従事者への転身。
それは彼にとって自然な選択だったと言う。 しかしながらこの挑戦は容易な道程でなかったことも確かだ。
畑の取得や設備の購入に費用はかかるし、ブドウ栽培を始めたとしてもワインとして完成するのは数年後のこととなる。
当然ワインが出来上がるまでは、収入などほとんどない。大きなリスクを取っての挑戦だった。

初めて彼のもとを訪問した時のこと覚えている。
彼とその家族が住む簡素な古い建物には、扉や窓がついていない箇所があり、それらを自分たちの手で修繕していた。
便利で刺激的なパリでの暮らしとは、180度異なる転換だったのだと思えた。
当初は5haの畑を持ち、トラクターを用いずに馬で耕耘(こううん)するなどしていた。
とても強い信念を持ち、自分自身の未来をしっかり見据えたワイン造りに取り組んでいたと思う。
人が年を重ねて変化していくように、その人が手掛けるワインも変化していく。
当初のグザヴィエ・マルシェのワインは、非常にシリアスでストイックなワインという印象だった。
しかし、今日現在の彼のワインからは、少し肩の力が抜けた、穏やかさや、柔らかさを感じられるようになっている。
現在彼は、畑を3haほどに縮小し、自身が管理していた畑を同じ地域で新しく自然派ワイン作りに挑戦しようとする若者たちに譲り渡している。
「3haは、目が行き届くちょうどいいサイズなんだ。」
かつては馬で行っていた耕耘(こううん)も現在はトラクターを利用している。
「馬を飼うのは楽しかったけど、大変でもあったよね。」

長く彼と付き合っていて感じる変化は、かつての自然至上主義から、自然を愛する仲間たちとのコミュニティを育てることにより重点を置いてるように感じること。
だからこそ少し肩の力を抜いて、実用的な仕事の仕方も取り入れるし、畑仕事自体もダウンサイジングしているのだと思う。
そしてそんな彼の変化は、ワインへとしっかりと写し取られている。
そしてもちろん変わらない部分もある。
彼がブドウ栽培を始めてから、畑では一貫して化学肥料や除草剤を用いない栽培を続け、ビオロジックであり、ビオディナミ栽培を真摯に取り組んでいる。
ワイン醸造においても、ブドウの果皮等に自生する自然酵母での発酵、厳密な清澄や濾過(ろか)を行わず、瓶詰めに至るまで亜硫酸塩(酸化防止剤)無添加とナチュラルな手法を選び続けている。
グザヴィエ・マルシェのワインには、いつもエモーションが満ちていて。
それこそが自然派ワインの最大の魅力であったりもする。
彼の家を訪れるときは昼食を用意してくれていることがほとんどで、冬に訪れた時に決まって出てくるのが、生の黒大根をスライスしたものだ。
ワインを試飲しながら、おつまみ的に食べるのだが、これが結構辛い。
「辛くてワインの試飲には合わないかい?でも僕は好きなんだよね。」
ニヒっといたずらっぽく微笑むグザヴィエ。
腕にはタトゥーがあって、丸縁のサングラスに、ボリュームたっぷりの髭。畑に向かう車に乗ると、スピーカーからはグランジよりのハードロックやヘヴィーメタルが流れ出す。
家の壁にはIbanezのベースやギターがかけてあって…と控えめに言ってもちょっといかつい印象を受ける彼だが、時折見せるこの笑顔からもわかるように、実はチャーミングな性格だったりする。
そして、こうしてリラックスして話す彼の姿からは、彼が本当に今の暮らしに満足していることがうかがい知れる。
長女が生まれたのをきっかけに、お金を稼ぐゲームのようだったという都会での仕事を離れ、ついに巡り合ったヴィニュロン(ブドウ栽培者・ワイン生産者)という仕事。
「この仕事は、最も自由な仕事だよ。僕を支配する唯一の力は自然の鼓動であり、ひとたび外に飛び出して、そこで得られる暮らしの豊かさは、何物にも代えられないものだから。」
そうやって自分の言葉をまっすぐに投げかけてくるグザヴィエ・マルシェ。
そして、ひとたび僕が彼の前に立つと、彼は僕のことを一人の人間としてしっかりと向き合ってくれ、僕の語る言葉を聞こうとしてくれる。
これは、僕が特別だからではない。
誰がここに来ようとも変わらずそうやって耳を傾けていくのだろう。
それが何よりも彼らしいと感じる。
そう、きっとあなたの言葉も。

(インポーター様資料より)

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