醸造方法
8月下旬収穫
全房で水平式圧搾
300~500Lの古樽で23ヶ月間発酵・熟成
無濾過・無清澄
瓶詰め:2019年8月
SO2微詰め時:16mg/L トータル:19mg/L
ワイン情報
フランケン、マインドライエック(三角地区)のムッシェルカルク(貝殻石灰岩)と赤砂岩土壌で育つリースリングをプレスし木樽で発
酵・熟成しました。
緑を帯びたイエロー、粘性・ディスクともしっかりしていて、黄桃やアプリコット、レモンバター、若葉、菩提樹の香り、しっかりとしたアタックは丸く口中に拡がり、良質な旨味とたっぷりの果実味に心地の良い味わいがアフターにも続きます。
生産者情報(インポータ・造り手・問屋情報)
ビュルツブルクからマイン川沿いに北西へ約34km上がったところにGambach(ガームバッハ)という小さな町があります。
生産者の名前はStefan Vetter(シュテファン・フェッター)、運良く巡り合えた彼のシルヴァーナーのキャラクターに驚き、日本からメールで“Nice to meet you”の約1ヶ月後、面識もなし土地勘ももちろんなしで住所を頼りに訪問しました。
マイン川沿いをビュルツブルクから北上して30分前後でしょうか、左手にマイン川をみながら途中から右手側はずっと急斜面のブドウ畑。
その畑の向こう側に彼が住む町があります。
急斜面の畑を迂回して住所上では到着しているはずなのに、そこは静かでのどか、どこか鄙びた雰囲気も漂う住宅地。
数人の女性・男性がガレージ前で談笑している以外は人影も見られず、当該住所の周りの道を右往左往してもなかなかお目当てのヴァイングート・シュテファン・フェッターは見つかりません。
ダメで元々、車から“すみません、このあたりにシュテファン・フェッターというワイナリーはありませんか?”、 “Its me!” なんとガレージ前で談笑していた穏やかな男性がその人。
“え?この人?、え?ここ?”というのが第一印象。
ここに辿りつくまでに、弊社のパートナーであるマルティン・ヴェルナー、アンディ・マン、ヤン・マティアス・クライン、アンディ・ヴァイガント、その全員がお気に入りの一人に必ず名前を挙げていたのがシュテファン。
どんな人なのだろうと会えるのを非常に楽しみにしていました。
メールとワインの印象からもっと厳しそうな雰囲気をイメージしていましたし、名産地の印象からまさかこんな住宅地にヴァイングートがあるとは思いもよらなかったのです。
挨拶も早々にまずは畑へ歩いて行こうという事になり、町の奥へ坂道を登っていき、途中からは森の中へ。
そこを抜けた先が先ほど車中から見た急斜面のブドウ畑。
後述しますが、ここがGambacher Kalbenstein(ガームバッヒャー・カルベンシュタイン)という素晴らしい区画。
畑の斜面は正確には南南西向きでしょうか、川沿いに南東へ畑が4km程続いています。
その一角に彼のパーセルが細かく点在しており、一つ一つの区画をゆっくりと回ります。
とても穏やかで謙虚、シャイ、でも笑うととてもチャーミングで回りの人を和ませてくれる、静かに話し穏やかに笑い、落ち着いて行動をする、そんな人間性が垣間見えます。
1979年9月22日生まれのシュテファンは、ワイナリーの道を選ばなかったとしたら、数学の先生か建築業界に興味があったそうです。
学生時代に何年かワイナリーで手伝いをしたことがきっかけで、オーストリアのAnita and Hans Nittnausで修行をすることになりました。
彼らがちょうど、ビオディナミ農法へ転換する際にチームの一人として働いており、その体験から緑にあふれるビオの農法へ興味を強く持って行いました。
また、このブドウの効能を最大限に得る唯一の方法が、醸造に出来るだけ人為的介入をしない、ブドウにメスをいれない、ナチュラルワインの醸造法だと気づきます。
2010年、現在の拠点ガームバッハから南東へ60km離れたCasteller Kirchberg(カステラー・キルヒベルク/シュタイガーバルト地区)に初めて畑を借りたのがヴァイングートとしての第一歩です。
当時はまだオーストリアのワイナリーで働きながら週末にドイツに帰って畑を見るという生活をしていました。
2012年、オーストリアの仕事(研修)を終え同じフランケンで父の田舎でもあるシュタイガーバルト地区のIphofen(イプホーフェン)に引っ越し、ここと現在の拠点のガームバッハにさらに2つの区画をかります。
その後3年の間に、ガームバッハの周りに素晴らしい区画Gambacher Kalbenstein(ガームバッヒャー・カルベンシュタイン)を手に出来る縁があり、それを期にイプホーフェンの畑は手放し2015年春にガームバッハへ完全に拠点を移します。
カステラー・キルヒベルクの畑はその間も今も保持したままで。
ガームバッヒャー・カルベンシュタインはとても珍しくユニークな区画で、急斜面なテラス状の畑で70年代、80年代に植樹されてからそのままの姿を維持していて、まるで数世紀まえの風景を見るように手つかずの印象です。
面積はわずか7.6haのとても小さないわばアペラシオンで土壌の構成も非常に興味深く、この区画の中で石灰土壌と赤砂岩土壌が侵食しあい、境界はもはやあいまいです。
この2種類の土壌の境界は明確ではなく、気が遠くなるほどの年月の間、侵食を繰り返してきたため、お互いに入り乱れ混ざりあっております。
隣り合ったパーセルどうしでも味わいが全く異なるのはこの2種類の土壌の構成がガームバッヒャー・カルベンシュタインの中で様々な形で複雑に絡みあっているからです。
このパーセルの違いをより理解し感じとるために、彼はパーセルごとに分けて樽熟成させます。
まるでジュラのジュリアン・ラベのようですが、シュテファンも同じように細かいパーセル毎にキュヴェを分けて作っており、その一因が土壌のテイストの違いを表現する為です。
シュタインテラッセンは樹齢が20~40年のパーセル、GKは赤砂土壌と貝殻石灰岩(ムッシェルカルク)が混ざる土壌の中でさらに選別したいい土壌で50年以上の高樹齢のパーセル、この中にシングルヴィンヤードがいくつかあり、それぞれ単一キュヴェ(The Longue Tongue、Himmelslücke、Rosenrain、The Schale)になります。
畑はもちろん無農薬。ビオロジックを基本にビオディナミの手法も率先して取り入れています。
ただ、この急斜面のテラスで実践するのは非常に困難と向き合わねばならず、多くの時間を畑仕事に割いております。
加えて、この急斜面の畑の中の2haは馬で耕しています。
”品種、ヴィンテージ、土壌のキャラクターをワインの中に映し出す。“
ワイン造りにおいての彼の明確な哲学です。
「シルヴァーナーは果実味を十分体感することは難しいが、畑と自然に向け合えば土壌とブドウ樹の成長をより表現することができる、だからシルヴァーナーは自分にとって品種として最も重要だ」といいます。
もちろん、フランケンのティピカルな品種であるのも重宝する理由の一つだそうです。
先人の多大な努力によって植樹されてきたガームバッヒャー・カルベンシュタインのブドウ樹齢はいま平均で30年~40年を迎えております。
そしてなんと最も古いものは1931年と1935年に植樹されており、このパーセルのものは彼のTop Cuveeにのみ使用されます。
彼が持つ畑は合計で約4ha、その70%近くがガームバッハの周りにあり、テラス状の急斜面に30もの細かいパーセルに分かれております。
残りの30%は、先述したカステラー・キルヒベルク/シュタイガ-バルト地区にあります。
1haあたりで5,000~6,000の樹が植わっており、平均収量は36hl/haです。
品種構成はシルヴァーナー70%、ミュラートゥルガウ15%、シュプートブルグンダー8%、リースリング7%です。
(ミュラートゥルガウ、シルヴァーナーのエントリーレベルのキュヴェの一部で近所の無農薬の農家からの買いブドウもブレンドされております。)
彼が目指すワインのスタイルは品種の如何に関わらずエレガントでフレッシュなスタイル。
アルコール度の高さも重要でないため、収穫は周りの生産者より早く行います。
言うまでもありませんが手摘みです。
プレスはエントリーレベルからシュタインテラッセン・レベルまでは旧式のスクリュープレス機、それ以上のキュヴェは現代式のバスケットプレス機を使用し4~6時間かけてゆっくりと絞ります。
ここ数年多くの生産者が使っているプヌマティック方式プレスは使用していないのも彼のワイン造りの特徴です。
搾汁後は1日デブルバージュ、上澄みのきれいなジュースのみを樽に移し、発酵・マロも樽の中で行いそのまま瓶詰まで約2年、澱と共に熟成させます。
この期間、一切ワインには触れずテイスティングですら数ヶ月に一度行うかどうかだといいます。
亜硫酸塩は瓶詰めまで一切添加せず、瓶詰め前の状態を見極めて無添加もしくは12~20ppm(12~20㎎/L) の添加を判断しています。
濾過と清澄は一切行いません。
熟成場所にもこだわりと哲学が生きています。
古いレンガでできたセラーは室温が年間を通してワインの熟成に最適で、季節の中で人間のコントロールなしに自然と微上下するのでワインが季節を感じ取れると彼は言います。
熟成は必ず樽を使用し(ストッキンジャー/300~600L)、そのパーセル毎に分けて仕込みます。
古樽も新樽も使用しますが、ウッディーなニュアンス、バニラ・テイストをワインに足しこむのが目的ではありません。
彼が目指すエレガントかつフレッシュなスタイルを表現するために樽が最も理想的な酸素透過性を実現できるからです。
モーゼルの見る者を魅了するドラマティックな急斜面と違い、シュテファンの急斜面のテラス状の畑は質朴、田舎的なそれです。
森や茂み、果樹で囲まれた景色はより牧歌的で古き時代を連想させると共に、とても落ちついた静かな雰囲気をまとっています。
まるで彼を映し出しているように朴とつで美しい景色です。
ラインガウ同様、かつてフランケンはドイツの中で最も称賛・礼賛を浴びた地域です。
ビュルツベルクは同地域で最も大きな都市であり、ワイン取引で多くの富を得てきました。
しかし特徴のない大量生産ワインをつくるジャイアント・ヴァイングートも数多く生み出し、未だに数多く存在し、この土地、畑、フランケンの地に不正義な農法をとっているという意見も存在します。
フランケンの長い歴史の中でシュテファンは彼の哲学と生み出すワインでこの流れに一石を投じています。
彼が造る歴史とワインが重要な分岐点となるはずだと信じてパートナーとして協力できることはとても誇らしい事だと感じています。
(インポーター様資料より)