札幌から世界へ
飽くなき挑戦
すすきのの喧騒から通りを一本入った商業ビルの1階
特別な時間と空間、長尾シェフならではの札幌フレンチの佇まいだ。
メニューは渾身の『aki nagaoおまかせコース』
移り変わる季節、自然の恵み、その時々のゲストに寄り添い丁寧に創られるコース料理
〜夏のある日のお品書き〜
桃とフルーツトマトのガスパチョ
ウニのタルト エスプレッソパウダー カリフラワーのムース 函館のハチミツ
函館
カワハギ 蕪とライム 肝のソースで仕上げて コラトゥーラ(イタリアの魚醤)
支笏湖
チップ 玄米味噌と黒オリーブのタップナード
季節のスープ
羊蹄 ホワイトアスパラのポタージュ
函館
平目 春キャベツとしじみの旨味のソース バジルオイルとこぶみかんの葉
石狩
仔羊 季節野菜のローストとレモングラス ヤングコーンのロースト
〆のデセール 苺のタルトと紅茶 薔薇の香りのソルベ 紅茶のジェノワーズ、キャラメル、
パン 豆乳仕立てアボカドとハーブのバター
余市の極みの泡と
自家製の美しいノンアルコールのグラス
注がれた美しいラベンダー色のドリンクは、ハーブでマリネした果実、樹木からの抽出エキス、木の芽の香りを移したライム等をブレンドして作られている。この日のフルーツトマトのガスパチョのために生まれたドリンクだ。ノンアルコールのペアリングは、料理を引き立てる新たな演出として注目されている。お酒を飲めない方でも、aki nagaoのお食事に合わせて、ワインを楽しむ方達と同様にユニークなグラスでのペアリングが楽しめる。
最初のスパークリングワインは余市から
ルレーヴワイナリーのMUSUBI Sparkling 〜極〜
瓶内二次発酵24ヶ月、ノンドサージュ、SO2無添加、ピノムニエ34%、シャルドネ33%、ピノノワール33% ストイックに作られたル・レーヴ本間さんのスパークリング。美しく貴重な1杯。
『函館のカワハギと肝』
至福のアミューズの次に運ばれてきたのは『カワハギの前菜』
昆布締めした函館のカワハギは、味わい深い。リッチなコクと旨味を纏った肝のソース、そこに蕪のフレッシュな食感とライムの爽やかな果実味が、口の中で贅沢に絡み合う。
澄んだカルデラ湖、支笏湖より
『支笏湖 チップ』
心尽しのコース料理から、一部をご紹介。
チップとはアイヌ語でヒメマスの意。玄米味噌と黒オリーブのタプナートをアクセントに、頭から尻尾まで、丸ごと頂く。
2杯のグラス、悠久の余韻
さてこれからお肉のメインというタイミングで注がれたのは、キュヴェ・マルセル2009年、ボジョレーで50年に1度と言われた当たり年の2009年、ラピエール氏の亡くなる前年のヴィンテージである。抜栓後からの時間経過も絶妙なタイミングで心地の良い味わい。褪せることのない豊かな果実味に、柔らかでな繊細な芳香。
(左)
Morgon Cuvee Marcel 2009 / モルゴン キュヴェ・マルセル 2009
生産者:マルセル・ラピエール ボジョレ フランス
品種:ガメイ
ブドウの作柄が特に良い時だけに作られたという特別なキュベ
(右)
Oslavje Fuori dal Tempo…2006 / ラディコン オスラーヴィエ フオーリ・ダル・テンポ 2006
生産者:ラディコン フリウリ イタリア
品種:シャルドネ ソーヴィニヨンブラン
アプリコット、紅茶、 “Fuori dal Tempo(時間の概念を超越している)”という意味
『石狩の仔羊』
季節野菜のローストとレモングラス
ヤングコーンのロースト
石狩の仔羊は、シルキーで柔らかな食感、フワっとピュア、そして甘美で優しい。
レモングラスの爽やかなニュアンスと柔らかな酸味を感じる円やかなソース、ローストした野菜の甘みと風味、フオーリ・ダル・テンポ が2杯目に運ばれる。 アプリコットのような酸味、エレガントな紅茶のような熟成香。まるで、料理にもマリアージュにも、いくつもの仕掛けが仕込まれているようである。
キュヴェ・マルセル 2009は仔羊、オスラーヴィエ・フオーリ・ダル・テンポ 2006はソース、そしてローストされた野菜は、普遍的な時間の経過を想わせる。
「自分達が美味しいと感じるワインを」
「常に楽しい組み合わせを、自信を持って提案したい」蝶野絵里子ソムリエ。
ノンアルペアリングのオリジナルレシピ開発にも意欲的に取り組み、好評を得ている。
aki nagao、洗練のワインのペアリングのなかでも人気の『北海道ペアリング』で提供されるワインの一部を見せていただいた。
Vignes Chantantes Entre Chien et Loup 2019 / ヴィーニュ・シャンタント アントル・シャン・エ・ルー (黄昏時)2019
宮本ヴィンヤード 三笠 北海道
ENISHI 2020 / ENISHI 〜縁〜 2020
ル・レーヴ・ワイナリー 余市 北海道
Tomo Rouge 2019 / トモ・ルージュ 2019
Domaine Atsushi Suzuki 余市 北海道
Dom Gris 2019 / ドングリ 2019
Domeine Mont 余市 北海道
NORA Rouge 2019 / ノラ・ルージュ2019
農楽蔵 北斗市 北海道
Nana Tsu Mori 2016 / ナナツモリ 2016
ドメーヌ・タカヒコ 余市 北海道
Mori 2019 / 森 2019
10R winery 岩見沢 北海道
Tap Kop Pinot Noir 2020 / タプコプ ピノ・ノワール 2020
Kondo Vineyard 岩見沢 北海道
KURISAWA BLANC 2020 / クリサワ・ブラン 2020
ナカザワヴィンヤード 岩見沢 北海道
チームakinagaoの限りない可能性
道産ワインと個性と才能溢れるチームのメンバー達
aki nagaoも、北海道北斗市に果樹園、葡萄畑を取得し、現在ワイン作りに挑んでいる。
「僕が生きているうちに、本当に良いワインが作れるようになるのは、難しいかもしれない。フランスもそうだけど、100年200年と長い年月を経てブドウもワインも良くなっていく。その取っ掛かりとして、僕が目指すのはあの土地にどのブドウが合うのかという事を調べるぐらいで終わってしまうかもしれない。でも、僕らレストランだからこそ造れるワインがきっとある。これからずっと続いていく道を切り開く、その経過の中で一生懸命良いものを作りたい」
北斗市の大地の可能性と長尾シェフの挑戦、そこから産まれるワイン、グラスに注がれる日が待ち遠しい。
「小学生の頃から、すでに料理が好きだった」
料理やお店のこだわり、ひとつあるとしたら『愛情』
「こだわりは、裏を返せば自分に足りていないこと、だからこそ拘る。良い素材を使うのは当たり前なので、これ無くして料理をすることは考えられないけど、母親のような料理を作ることなどは、なかなかできない。だから『愛情』には、こだわりをもって仕事をしていきたいと思うのです」
料理、故郷の北の大地、チームへの想い、素顔の長尾シェフの言葉や表情のひとつひとつに、優しさが現れる。
オーナーシェフ 長尾 彰浩
料理人になりたかった父親の元で育ち、子供の頃から食材に関心を抱き、手帳にレシピを書いたり、両親の間で料理をするようになった。100坪近い庭の家庭菜園で野菜を作り、父親と夏は魚釣り、貝拾い、春は山へ山菜を採りに、秋にはきのこ狩りや、新鮮な実を獲る。イカ釣りに行き、船の上で沖漬けを作る。健全な食材で料理や保存食を仕込む。そんな本物の食材や料理と身近な環境で子供時代を過ごした。後に、父親が叶えることができなかった夢を引き継ぐが如く調理師を志す。都内のフランス料理店、26歳で3年間渡仏しパリの2つ星レストランと経験を積み、取り憑かれたように貪欲に料理の世界を追求し邁進してゆく。2010年にaki nagaoをオープン、食の本質を妥協することなく、オリジナリティーに富んだ表現で、繊細でクリエイティブな料理を生み出し、国内外のグルメ達を魅了する。札幌の中心部の姉妹店『フレンチパンダ』『バードウォッチング』『ワインマン』『シティーボーイ』を展開し、北斗市では自社のワイナリーを建設中。札幌から世界へ、独自の流れを大胆に創り続ける。
伝統と新しい創作の心地よさ
古典とモダンが融合する設え、時間の流れも俗世の喧騒も忘れる。
Interview / Photo / Text
山脇ミチル | Michiru Yamawaki
aki nagao
住所 北海道札幌市中央区南3西3-3
G DINING 1F
電話番号 011-206-1789
営業時間
[ランチ(土・祝日のみ)]
12:00〜13:00(L.O)
※前日までの要予約
[ディナー]
17:30〜19:30(L.O)
定休日 日曜定休/他不定休有り
※お店の情報は取材を行った(2022年7月)時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニューなど、店舗情報についての最新の情報はお店のSNS、または店舗に直接ご確認ください。営業時間やメニューなど変更になっている場合もございます。