自然と本質、都会を耕すフリーダム
軒先には、店名になった『ラ・ピヨッシュ』(フランス語で鍬やツルハシの意)と、小枝の薪束。
店頭に立てかけられた黒板には『自然なワイン、自然な食べ物、旬の食材の入荷』
大都会、日本橋の片隅の聖地、ラ・ピヨッシュ。
オーナーの林真也さんに会いに、日本中、いや、各国から、ナチュラルワインラバーや、生産者達が、この店を訪れる。
一期一会の葡萄酒に出会う
気の置けない仲間たちとの食卓、誰が言い出したのか「私をサヴォワに連れて行って!」
1本目から、本気のペティアンだ。
微発泡というより美発泡。締まるところと緩むとことのバランスが絶妙で、ただ、ただ美味しい。Ars Antiquaとは「昔の手法で」という意味のラテン語である。
Ars Antiqua 2013 / アルス アンティカ
La Vigne du Perron ラ・ヴィーニュ・デュ・ペロン
生産者:フランソワ・グリナン サヴォワ / フランス
品種:ルーセット シャルドネ
「全ての基本はナチュラルな造りのワインそれが唯一のコンセプトで、それしかない」
「冬に胡瓜は絶対に出てこない、ズッキーニ、トマトも冬場のメニューに出てこない。今、旬で食べられるブッラータとトマトの前菜は、トマトが入って来なくなったら提供できない」旬が変われば、その時の旬のものにメニューが置き換わるのは、どこのお店でもそうだが、今や当たり前に一年中食べられるトマトや胡瓜の季節感というものを、ここに来て思い出す。
ナチュラルなワインに合わせて、ラ・ピヨッシュの全てが組み立てられる。プリミティブで温かみのある内装に、手書きで書かれたメニューに並ぶ旬の食材は、生産者たちが天塩にかけて育てた大切なものばかりだ。
農家の食卓
『水ナスのサラダ』
味の濃いグリーンと、瑞々しい旬の茄子のサラダ。ナチュラル生産者の造るオリーブオイル、オキピンティのオーリオ・ゲータと岩塩。そこに、ふわっと、シュレッドされた18ヶ月熟成のパルミジャーノ。
旬の食材
『琵琶湖の小鮎のフリット』
頭から尻尾まで、丸ごと食べられる最高のフィンガーフード
南仏のギネルというヴィネグリーのナチュラルワインヴィネガーが使われている。
みんなで、ワインも小鮎もあっという間に平らげる。
『今の気分はシュナンブラン・・・』
ゲストのこの一声に応戦すべく、林さんの見事なシュナンブランの五段活用のプレゼンテーション。
どれを選んでも、一期一会の幸せの味わいを満喫できることに疑いの余地はない。
・La Lune 2019 / La Ferme de la Sansonniere
マルク・アンジェリ
・Lulu 2014 / Nicolas Renard
ニコラ・ルナール
・Charme 2018 / L’ange Vin
ジャン-ピエール・ロビノ
・Les Onglés 2018 / Stéphane Bernaudeau
ステファン・ベルノドー
・Nuee Bulleuse 2015 / Les Vignes de Babass
レ・ヴィーニュ・ド・ババス(セバスチャン・デルヴュー)
「自然なものと自然なものを、ありのままに頂くペアリング」
集いのテーブルの中央にドーンと、新井さんのポーク。
お肉の旨味、意気が良い付け合わせのもりもりグリーンリーフ。農家さんが、秋に収穫後、低温で貯蔵して寝かしたというジャガイモ。イモ味が本当に濃くて驚く。
「ワイン、糧、人、すべてがナチュラルなマリアージュ」
農家の料理、ナチュラルワイン、そこに自然と湧き起こる笑顔、これ以上のマリアージュがあるだろうか。自然なものたちと、自然なワインとの共演である。
CUVEE BIGAREE 2019 / DOMAINE ANTOINE COULY
ドメーヌ・アントワーヌ・クーリィ
ガメイ / サヴォア
優しく優雅で、柔らかく上品な柑橘、そして野生味やエネルギーも感じる。
ワインの生産者を自らの足で訪ね、食材の生産者と話し、この場に繋げる
「サヴォアでワインの造りを覚えるために畑仕事をしている頃から、自分のお店の名前を、畑を耕す鍬やツルハシを意味する『ラ・ピヨッシュ』にすると決めていた」
「朝、5時から夜9時まで畑を耕して、腰は折れそうになり、1日でTシャツを3枚ぐらい汚して着替え、辛すぎて当時は本当に逃げ出したかった。それだけに帰国後、そうやって本当に、大変な思いをして作っているようなワインを扱わせてもらったり、飲ませてもらっていることが、大事なことで、その作業が大切であるということを、心に留めた。畑を耕すということは、基本中の基本。そして、それは一番辛い仕事だった」
「工業製品ではなく、生産本数が少ない自然な造りのワインを扱っている以上、生産者との繋がりはあたりまえ。扱っているワインというより、その人の気持ちや魂をお客さまに届けないとならないと思っていて、要するに、単にモノではなくて、気持ち、魂、哲学といったものをなるべく届けたい」
要するに、なんも小難しいことではなく、愛なのだろう。
それが溢れる場なので、ワインも食事も美味しいし、ここに集うことが幸せなのだ。
世の中がどんな状態であっても、ナチュラルなワインのお店を貫き通し、出会いを全て愛情で包み込み、ポン!っと、軽快な抜栓の音を響かせ、毎日をスペシャルにしてしまう。ラ・ピヨッシュの魅力と威力は、大地、畑に近い酒場であること、そして、ここの豊富なナチュラルワインのセレクションと、その美味しさであるが、それを支えているのは、間違えなく林さんのこの愛情に他ならないだろう。
工業的なものを極力減らして造られた手造りのお店
切り株の温もり、塗り壁のやわらかな空間。右の扉は林さんの小部屋、セラーへの入り口。
そう 毎日がスペシャル!!
本日も、スペシャルな1本と共にセラーから登場
Interview / photo / text
山脇ミチル|Michiru Yamawaki
ラ ピヨッシュ( La Pioche)
住所 :東京都中央区日本橋蛎殻町1-18-1
電話番号:03-3669-7988
営業時間:[月〜金]
17:30〜23:00(L.O.)
:[土•日•祝]
16:00〜23:00(L.O.)
定休日 :不定休
SNS : Facebook